ジャークチキン

フード

お昼近くになると、
うちの店の前に大きなフードトラックが陣取り、
メニューのサンドイッチボードが置かれ、
バーベキューがはじまった。
隣にオープンする予定のレストランが、
臨時でテイクアウトの販売を始めたのだ。

隣は、老舗?のパブだった。
ビール好きな旦那にとって、隣がパブとは最高すぎる立地。
にもかかわらず、一歩たりとも踏み入れようとしない。
最初は怪訝に思っていたが、確かに繁盛しているようにも見えず、
あえて話題にすることもなかった。
私たちが越してきた頃には、すでに開店休業のようなお店で、
私自身は1度も店内に入ったことがない。
旦那が言うには、高齢の ”ママルンバ”
(本名なのかニックネームなのか知らないが、
車のナンバープレートもママルンバ)が経営者で、
ほぼ内輪だけでダーツをしている集会所みたいなもんだったらしい。

その隣にジムをオープンしたオーナーも、
近隣コミュニティーに ”ジム オープン” の周知活動をしていた際、
一休みにビールでもと思い、挨拶がてらパブに入ったことがあるそうだ。
ところが、中にいたお客にジロリと見られ、
ビールを注文すると、「販売しているビールはない」と言われたのだとか。
そそくさと店を出て、”なんじゃ、ここは?”と思ったらしい。
それがかれこれ7年前だ。

ママルンバの子どもたちの中に店を継ぐ者はなく、
旦那の勝手な予想で、店を閉めるのは時間の問題とされていた。
それが、なんやかんやと怪しい状態のまま最近まで続き、
ここへきてやっと後継のテナントが決定したところだった。
店内の改装はまだ始まったばかりで、
9月にテイクアウトの販売をスタート。
そしてグランドオープンは11月になるとのことだ。

旦那にフードトラックのことを教えられ、
チラ見しようと店のドアを開けた瞬間、
バーベキューをしていたおじさんと目が合ってしまう。
まさに何も言わないのは気まずすぎるシチュエーション。
とっさに「いいにお~い」と鉄板のセリフをつぶやくと、
陽気なおじさんが近寄ってくる。
そのまま成り行きで改装が始まったばかりの店内見学に。

まだ内装は以前のままで、
クラッシックな雰囲気がわずかに残っていた。
そういえば、数年前に何かのドラマ撮影で使われたことがあったっけ。
当時、撮影風景を見たかったのだが、(こんなチャンスはまずない)
気づいた時には店の前に煌々と撮影用ライトが照らされ、
出るに出られなくなってしまった。
この出遅れのせいで、一切撮影を見られなかったという
苦い思い出が蘇ってきた…

ジャマイカの代表的な肉料理として知られるジャークチキン。
トロントでは、よく見かけるメニューで
ずっと食べてみたいと思っているのだが、
スパイシーなのでいつも回避してしまっていた。
その辺をおじさんに聞いてみると、
「もちろん、そういうお客さんも多いから、
スパイスを少し抑えることはできるよ」と言う。

ということで、早速ランチに購入して食べてみた。
出だしは好調で辛さは少ししか感じなかったのだが、
進むにつれて徐々に口の中が火を噴き始めた。
付け合わせの甘めのコールスローと
ライスのおかげで完食することに成功。
うちの手抜きディナー時の選択肢として期待できそうだ。

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