お皿に残った最後の一つには誰も手を出さない。
この光景は、本当に日本特有のものだと思う。
こちらの人は、自分の好きなものは好きなだけ取る。
それが最初であろうが最後であろうが気にする人はいない。
日本人には、その場の人数と食べ物の数が合わないことを
瞬時に察する優れた能力があると思う。
そして、全員に平等に渡るように切り分けたり、
少しずつ自分のお皿に盛ったりするなど
無意識に気を配る傾向にある。
この “ゆずりあいの精神” がカナダに存在しないのは、
なにも食べ物に限ったことではない。
要は何でも、”早い者勝ち” の世界なのだ。
先日行ったコテージの部屋取りがまさにそうだった。
2階に5部屋あり、少しずつ大きさも違えば、
部屋の窓から見える景色も違う。
当然ながら、マスターベッドルームが一番広く
しかも唯一専用のバスルームが付いていた。
全員がこの家に入るのは初めてで、誰も間取りを知らない。
家の中に入るなり ”各部屋を見て回る” という行動は皆同じ。
各々、「すげぇ」「デカイなこの家」と感心しながら
一回りしていたのだが、
驚いたのはその時点ですでに自分の部屋を確保していたこと。
マスターベッドルームは発起人の友人がとった。
「おっ、バスルーム付きだ。オレこことっぴ!」と
冗談交じりに私に向かって言ったが、
すでに彼の友人(2番目に広い部屋)と、
彼の従妹は部屋を確保済みだった。
さすがに一番大きい部屋は、暗黙の了解で
すべての手配をした彼に譲ったのかもしれないが、
ルームツアーを終えた後に、
みんなでどの部屋にするかという話し合いはないのか?
(宿泊費は全員でワリカンしてるんだぞ…)
この素早さというのか、個人主義というのか、
「いやいや、どうぞどうぞ」
「じゃ、平等にジャンケンで」などといった
”ゆずりあい” 現象は、一切起こらない。
期待しても無駄というものだ。
うちの旦那は、こういうことに無頓着なので
(しかも、私は強く出られない生粋の日本人…)
いつも最後のあまりを引くことになる。
しかし今回は、もう一組のカップルの到着が遅れていたので、
私たちには選択肢が残っていた。
私は庭に面した明るい部屋を取ろうとしたが、
なぜか彼はもう一つの部屋にするという。
表道路に面した部屋で、
どう見てももう一つの部屋より小さく暗い。
(後で気づいたのだが窓も壊れていた)
「何で?」と突っ込むと、
「今日、奴はバースデーボーイだから」
(金曜日は彼の誕生日であった)
この日本人のような気配りが突如として現れるのが宇宙級の謎だ。
そして彼は自ら、おそらく一番小さいと思われる角の部屋を取った。
たった2泊の寝るだけの部屋なのでどうってことないが、
もしこれが長期での滞在になるとしたら、この私でも物申したと思う。
今回の参加者は男子7人、女子3人。
2階にあるバスルームを全員で共有する。
日本人的に考えると、唯一バスルームがついている部屋は
女子の誰かに譲りそうなものだが、
その部屋を男子2人が使うというのも
ここはレディーファーストの国ではなかったのか?と
首をかしげてしまうところだ。
旦那がいい部屋を他人に譲ったという行動は
日本人として嬉しくもあるが、
それに誰も気づかないこの国では時に虚しさにもつながる。
バースデーボーイ本人でさえ、
自分に気を遣ってくれた人がいることなどこれっぽちも知らない…
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