居候を始めた頃、彼の家の近くにはビーチがあった。
トロントは海に面していないが大きな湖がある。
オンタリオ湖だ。
この広大なカナダで、海沿いの街に住まなくても
ビーチを気軽に楽しめるのは、
たくさんの湖が点在しているおかげだ。
また色々なスポーツを気軽に楽しめるのも魅力的だ。
組織化されたソーシャルグループがいくつもあるので
スポーツ好きにはとても嬉しい。
旦那がバレーボールをしていたので、
私も一緒にプレーするようになった。
メインはインドアバレーだが、
夏になるとビーチバレーに切り替わる。
仲間内でビーチに繰り出し、ただ楽しむのも有りだし、
組織がリーグ(もちろん有料)を組んでくれるので、
それに参加するのもお手軽で面白い。
初めての夏、近くのビーチで行われていたリーグに参加した。
時間は夜の6時から9時頃に設定されていて、
私たちは荷台のない彼のチャリに二人乗りしビーチへ通っていた。
夏は日が長く6時はまだ明るい。
ゲームを終えるころに、やっと日が暮れるような感じだ。
そして終了後は、
ビーチに面したレストランのパティオでビールを飲みながら、
とりとめのない会話に花を咲かせる。
参加者の目当てはバレーよりもこっちだったりする。
その日もチームメートと美味しいビールを飲んで楽しいひと時を過ごし、
「また来週!」と解散しかけた時、
旦那がチャリの鍵を無くしたことに気付く。
チームメートも探すのを手伝ってくれたが、
真っ暗な砂浜で小さな鍵が見つかるはずもなく、
私たちは諦めてチャリを置き去りにすることにした。
しかし問題は他にもあった。
その鍵には家の鍵もついており、家に入ることができない。
深夜近くの迷惑な時間帯であることは百も承知だが、
アパートの管理人(地下に住んでいる)のドアを叩きまくり、
なんとか部屋の合鍵を手に入れた。
ホッとしたのもつかの間、
旦那はチャリの合鍵を持ってビーチへ引き返すと言う。
当時チャリ通勤をしていた彼には、
翌日の出勤にチャリが必要だったのだ。
(彼の頭の中には、1日くらいタクシーやバスを使うという
選択肢はないらしい)
ビーチまでは真っすぐ一本道とはいえ、歩けば30分以上かかる。
時間的にバスも通っていない。
そこで彼が引っ張り出してきたのはインラインスケート!
スケート靴を履くと、闇の中にス~っと消えていった。
その後ろ姿を見送りながら、
カナダにはそんなクールな交通手段があったのかと
妙に感心した出来事だ。
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