浦島太郎

日本

洋服の販売員の声掛けは、
なぜあんな独特なイントネーションになったのだろう?
若かりし頃、ものまねが得意な私の妹は、
よく販売員やエレベーターガールの
(今もいるのだろうか?)
ものまねを披露してくれた。
これが実にうまく爆笑させられたことを思い出す。
普通とは微妙に違うところで半音を突っ込んでくる
あのイントネーション。
さらには声の出し方も特徴的で、
どこのお店の店員さんもほぼ同じだ。
どう頑張っても真似できない私には
向かない職の1つかもしれない。

いくつか買い物をしたが、
店員さんの対応が相変わらず丁寧で
ついついこちらが恐縮してしまう。
そういえば、病院の受付の人の対応も、
めちゃくちゃ丁寧だった。
そんな懐かしさをくすぐられる接客に
時に恐縮し、時に感心しながら
日本にいることを日々実感している。

一方で、数年ぶりに帰国すると
浦島太郎状態なことも多々発生する。
コロナ後、初めての帰省だった2023年の秋。
セルフレジが導入されていたことにかなり戸惑った。
もちろんカナダにもセルフレジはある。
しかしそれは完全なるセルフであって、
日本のコンビニなんかに導入されている
店員さんとセルフレジの両刀使いは見たことがない。

店員さんが商品をスキャンした後、
お金を現金で支払おうとすると、
店員さんは知らん顔。
何をどうしていいかわからずキョトンとする私に
「そちら側でお支払いください」と冷たく言い放つ。
何が起こっているのか理解するのに時間がかかった。
店員さんの顔には日本語が通じない絶望感が浮かび、
私には、日本語なのに
言われていることが理解できない焦りが浮かぶ。

デパートなどの接客はめちゃくちゃ丁寧だが、
正直コンビニの接客は冷たくなったと感じるのは
私だけだろうか?
このレジシステムに、私はまだ慣れていない。
人がスキャンしてくれると、
無意識にその人に支払いをしてしまうのだ。
まさにパブロフの犬状態。

今日も、支払いの段階になって
現金を店員さんに支払おうとした私。
彼女は「そちらで・・・・どうぞ」と冷たく言い放つと、
迷惑そうに横へ移動し、
「お次のお客様、こちらへ・・・・どうぞ」と
次のお客さんを隣のレジに呼び込んだ。
この置き去り感、何なん?
”コイツ遅っせえ” ”まじ迷惑”
”支払い方、未だに知らないの?”
という非難の視線が突き刺さる。

昔はよく知っていた駅前も
今はすっかり様変わり。
記憶と違う景色は方向感覚を鈍らせる。
慣れていたはずの電車の乗り換えも
スムーズにはいかず、
何度もホームを間違える。
電車の進行方向さえ分からなくなっている。
行きたかった店や銀行が消えている。

一筋縄ではいかない外出に
どっと疲れが出始めている帰国4日目である。
今夜はゆっくりお風呂に浸かって心も体も休めよう…

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