物怖じ

カナダ/カナダ人

私は積極性に欠ける。
これは今に始まったことじゃない。
学校の通知表に書かれる先生からのコメントは
”もっと積極的になりましょう” と決まっていた。

英語力を伸ばすには、英語を使わなければ始まらない。
“英語を話す国に住めば自然と上達する“ というような
そんな簡単なものじゃない。
しゃべってなんぼだ。
たとえ大したことをしゃべっていなくても、
周りの人を惹きつけてしまえる才能の持ち主がうらやましい。
これは英語に限らず、今までの人生でも
不思議な求心力のある人ってのが必ず存在した。
そういう星の元に生まれた特別な人が…

毎週1回のバレーボールに、
今年の初めくらいから顔を出すようになった25歳の女性がいる。
キックボクシングジムのメンバーで、
オーナーから紹介されたのがきっかけだった。
カレッジでプレーしていたらしく、
卒業後、バレーをする機会を探しているのだという。
私たちのグループは常にサブ(欠席者の代わり)を探している。
そこで必要な時に彼女に声をかけるようになった。

実は、コロナ後にこのバレーが再開された時、
数人のコアメンバーが抜けた。
新規でフルメンバーを探していた時に、
近所のパブで旦那がたまたま声をかけたのが
当時大学生だった男性だ。
(彼は速攻ケガで離脱。十字靭帯断裂という大ケガだった)
その時、彼繋がりでもう1人女子学生がメンバーになった。
現役のバレーボールプレーヤーで、
1シーズン一緒にプレーした。

彼女も決して物怖じするタイプではなかったが、
おっさんグループに溶け込むほどの
社交的な雰囲気は持ち合わせていなかった。
しかし今度の25歳は180度タイプが違う。
実は2人は同級生で、
大学在籍時は一緒にプレーしていたらしい。
最初の彼女はリベロ。
今回の彼女は幼少期からずっとセッターで、
卒業後は母校のバレーチームのコーチをしていたというだけあって、
プレー中の積極さも各段に違う。

彼女は ”サブ” という単発の参加であるにもかかわらず、
最初からゲーム後のバプにも顔を出した。
見知らぬおっさんたちが囲む長テーブルの真ん中に陣取り、
お酒も飲まずに、時には話の主導権を握る。
私からしたらあっぱれである。

もちろんカナダ人なので英語に不自由はない。
それでも、初対面のおっさんたちと対等に渡り合い、
意見を交わせるその度胸と話術がうらやましい。

英語に敬語がないというのは語弊があるのだが、
他愛もない会話では、日本語のように
相手に合わせて丁寧語や敬語を使い分ける必要がない。
誰に対しても同じ口調でしゃべれるのは
ひとつ大きな利点かもしれない。
初対面だろうが年上だろうが、
話し方を変える必要はまったくない。

自分の親以上の年齢の人に声をかける時も
単純に名前を呼べばいい。
これ、本当に便利。
それだけでも対等感を感じられる。

彼女が初めて参加した日の帰り際のことだ。
私たちは車がないので、
いつも同じ方向のメンバーが送ってくれる。
彼女もうちの近所なので同じ車に同乗することになった。
うちの旦那は誰かの車に便乗するのは得意なのだが、
それなりに気を使う場面もある。
ドライバーが余計なUターンなどをしなくて済むように、
家の目の前まで行ってもらわずに車を止めてもらう。

その日、旦那は同じように気を使い
”ここからどちらも歩けるから” と止めてもらおうとしたが、
彼女はマイペースに「そこを左折してくれる?」と指示を出す。
強えぇぇ…
私だったら言えない。
初対面。初日。
しかも「ここでいいよ」と言う意見を差し置き、
「私の家はあっち」と主張できる
この物怖じしない強心臓。
私には100年かかっても追いつけない自信がある。

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