遠い約束

文化の違い

洗濯機のない彼の家で約2年近く暮らした。
その間、雨にも負けず雪にも負けず
粛々と週1でコインランドリーへ通った。

晴れて永住権を獲得し、2年ぶりに実家へ帰省。
ひょんなことから滞在が1年近くに延びてしまったのだが
私が不在のまま、旦那は一人で引越しをした。
独立したいという野望は聞いていたので止めはしない。
どこに移ろうが、私の荷物を雑に扱われようが文句も言わない。
ただ一つだけ叶えて欲しいもの ― それは洗濯機。

自分の家の中にある洗濯機。
他のことをしながら回せる洗濯機。
1万km離れた日本から、
しつこいくらいに洗濯機を入れてくれと懇願した。
彼の反応は、軽いノリで「ノープロブレム」。
もちろん今回も古い物件なので、洗濯機を置く構造にはなっていない。
それでもスペースはあるし工事も簡単だと…

そしてカナダへ帰国。
空港から引越し先へ向かう私の頭の中では、
どんな場所か、どんな住居かということよりも
洗濯機のある家を想像してどこかワクワクしていた。

そんな気の利いた旦那ではないことは分かっていたが、
こんなにまでも期待どおりという人もなかなかいない。
久々に帰ってくる愛しの人を驚かせようとか
喜ばせようという考えはこれっぽっちもないらしい。

百歩譲って洗濯機の購入はまだだったとしても、
すぐに設置できる状態にはなっていると信じていた。
ところがどこを見渡しても、そんな場所は見当たらない。
どこにもだ!

約束と違う… あの時の落胆は言葉では言い表せない。
洗濯機に対するこの温度差の違い。
彼にとっては優先度がはるかに低く、
「この壁をぶち破れば置くスペースができる」程度の
単なる想像の段階で時が止まっていた。

こうしてコインランドリーとのお別れは
はかない夢となって散ることになる。
外は雪。2月が始まったばかり。トロントの冬は長い…

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