人の器

私は恵まれたことに、
職場の人間関係に苦労することなく過ごしてきた。
(カナダに来るまでは…)
アルバイト、派遣、正社員。
そのどれも経験したが、
意地悪な先輩や同僚などにはお目にかからなかった。
働き始めたのは女性の仕事に“お茶くみ”がまだあった時代なので、
変なオヤジ上司はたくさんいた。
ただ、自分に与えられた仕事には直接関係しないので
それほど大きな問題にはならなかった。
世の中、アホな上司はどこにでもいるものだと学んだ程度だ。

カナダで初めて働いた時も、職場の仲間には恵まれた。
確かに変な上司的立場の人はいたが、
ここでも私はその人の直属にあたらなかったので被害はなかった。
その後働いた場所も、経営者の理不尽な要求に遭遇したが、
(同僚はみないい人達だった)
意見を主張したことで改善が見られた。

余談だが、意見の主張と言えば聞こえはいいが、
決してそんなカッコイイものじゃない。
自分の英語がつたなすぎて思っていることの半分も伝えられず
もどかしさから、押さえられない感情が
怒涛のように涙になって溢れてしまった。
自分でもびっくり仰天の人生初の経験だった。
赤の他人の前で、こんなにも涙を流したのは
後にも先にもこの1回きりだ。

そして人生初の ”いじめ” に出会う。
移民手続きが完了し、晴れて自由に仕事ができるようになった時、
とりあえずパートで仕事を始めた。
まさかそこで、いじめに出会おうとは…
夫婦で経営しているお店で、その奥さんが曲者だった。
私がその異変に気付いたのは、
2、3か月後に入ってきた新人さんへの文句を聞かされ始めた時だ。
その子からも、「なんか私にアタリが強いんですけど…」と
相談もされた。
そして、あからさまに意地悪な態度を取っているのが
目に見えるようになっていった。

新人さんは、とても人懐っこい性格で、
いつしか奥さんの心をつかむことに成功する。
そして、いじめの対象から溺愛の従業員へと一気に昇格した。
「めでたしめでたし」である。
ところが、常に ”いじめ” をしていたい体質の奥さんには
次なる獲物が必要になる。
その獲物に降格したのが私だ。

なんやかんやと私のすることにダメ出しが出始め、
朝の挨拶をしても無視、
オーダーを入れにいっても無視という状態に。
接客業としての常識である接客第一の姿勢をもなじられ、
「仕事ができない人」という烙印を押された。
一番ベテランの同僚に相談したところ、
彼女も奥さんの態度にうすうす気づいていたようで、
この人が1人をピックしていじめる常習犯であることを知った。
このベテラン同僚もいじめられた過去があるそうで、
私と入れ違いで辞めていった人も
一時期いじめに苦しんでいたという。
(レジのお金を盗んでるのではという疑いまでかけられたらしい!)

状況を改善すべく、2人きりで話をする機会を作ってもらったが、
その際のあちらの言い分が宇宙級にアホすぎて
この人のために私の大事な時間を費やす価値はないと悟った。
大ボスは一応旦那の方なので、
旦那に「あなたの奥さんとは働けない」と告げ辞めた。
彼は、「状況は俺にはよく分からないが、旦那である以上、
自分の妻側に付かざるを得ない」と苦し紛れの答えを返してきた。
味方をしてくれたところで仕事を続ける気はさらさらないので
そんなことは、もうどうでもいい。

この奥さんは、人の幸せを喜べないタイプの
器のちーーーーーっさな人間なのだと思う。
異国へ来て、同郷の人間をいじめることに生きがいを感じている。
うちに来るお客さんの中で
この奥さんに対していい印象を抱いていないという人に数人出会った。
常連さんや友人には底抜けに明るい接客をするが、
初めてのお客さんには、別人かと思うような
冷たい態度の時もあったことを思い出す。
従業員のみならず、お客さんもピックしているということだろう。
人懐っこい犬のように、キャンキャンと寄ってくる人を好み、
猫のように自立していて冷めているタイプを嫌う。
ある友人が言った。
「その人、幸せじゃないんだよ」って。

こういう程度の低い人間に成り下がらないように
たとえビンボーでも、
小さな幸せを見つけながら心豊かに生きていこうと思う…

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