猫の飲み水

文化の違い

この国に来てから最も順応できないもの。
それは桁外れに違う衛生感覚。
カナダは先進国だし、街並みもそれなりにきれいだ。
一見すれば日本と差はない。
それでも…だ。

義理の母は猫好きらしい。
今はいないが長いこと猫を飼っていた。
私はどちらかと言えば犬派だが猫も決して嫌いじゃない。
動物は何だってかわいい。

義母が飼っていたスモーキーに初めてお目にかかったのは、
カナダに来て間もない頃、泊まりがけで義母の家に行った時だ。
猫特有のツンデレな態度に張り合い、
自分も興味がないかのようにクールに振舞う。
ただ内心は、寄ってきてくれることを期待していた。

2日目の夜。
夜中にトイレへ行くと、トイレの蓋に何やら手書きの張り紙が。
寝ぼけ眼な上に、文字が外国語だからなのか、
意味がよく分からない。

いや違う。
あまりに衝撃的すぎて脳の動きが停止したのだ。
「便器の蓋を閉めないで!
 スモーキーが水を飲めなくなるから」

・・・

飲み水は専用のボウルに入れて部屋の隅に置いておくものではないのか?
普通、皆そうしているものだと思っていたのは私だけの常識か?

便座から “水辺” まではスモーキーには遠すぎる。
あのピンクのカワイイ舌が、(もしくは首か?)
ルフィ―のように伸びるなら話は別だが。

となれば、
私のももを軽く指圧してくれた、あの柔らかい肉球は
トイレットボウルの中についた足…
優しく舐めてくれた舌は、”水辺”の水につけた舌…

昼間のスモーキーとの接触を思い返して震えた。
ツンデレが見せるカワイさにとろけていた自分を呪う。
これが文化の違いというものなのだろうか?
衛生感覚の違いにおびえる日々は今日も続く。

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