あふれる才能

旦那

うちの旦那は汚しの天才だ。
私は3人姉妹の真ん中で、姉とは年子だ。
母曰く、「2人ともお行儀がよく、
食事の時などの躾は特に必要なかった」そうだ。
テーブルの上の物に手を出すこともなく、
手や口の周りが汚れるとイヤなのか泣きだしたらしい。

そんな素晴らしい資質を備えた私たちは、
無意識に「きれい」のセンサーが働く。
汚れをきれいにするというよりも、
なるべく汚さないよう気を配るのだ。
食事中なら、こぼさないように注意するし、
もしこぼしてしまえば、すぐに拭き取り片付ける。

でもこうした感覚は私たちだけじゃなく、
大人ならある程度は備わっているものだと思っていた。
うちの旦那に出会うまでは。

食べ始めて3秒で何かしらこぼす。
テーブルのみならず、足元にも次から次へとポロポロポロ…
シャツには瞬殺でシミを作る。
こぼしても気にしない。
それどころか気付いていないことも多い。
目の前にいる人は、一体何歳児なのかと目を疑った。

彼が料理をした後のキッチンは
ハリケーンが通り過ぎたかのように荒れている。
塩コショウがそこら中に広がり、
ガスコンロはカピカピの吹きこぼれだらけ。
シンクには山ほどの洗い物がたまり、
野菜のヘタや皮があちこちに散乱する。

これを一体誰が片付けるのか… 勘弁してほしい。
旦那の「きれい」センサーは
私からすれば完全なる不良品なので、
後片づけなど任せられるはずがない。
そっくりそのまま私の仕事になる。

これはもう仕方ない。
キッチンだけでなく、
基本的に家の中の掃除は旦那にしてほしくない。
衛生感覚がまるで違うからだ。
彼が突然思い付いたように動きだした時は要注意。
見張りを怠ってはいけない…

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