空気を読む

”空気を読む”ことのすばらしさ。
私の勝手な思い込みかもしれないが、
先日、それを実感させられた出来事があった。

友人の誕生日を祝うディナーで
ダウンタウンのレストランに総勢8人が集った。
旦那はサプライズでケーキを用意するために
レストラン近くのお店でケーキを購入し
私たちは当日、汗だくになってピックアップしに行った。

ピックアップしたケーキをレストランに届け、
近くのパブにすでに集まっていた数人の仲間に加わったのだが、
ケーキを預ける際、
旦那はいつになく神経質になっていた。
レセプションの女性にただ預けてしまうのは心元なかったのか、
「冷蔵庫に入れておくから大丈夫よ」
と言う女性に一緒についていこうとする。
何度も大丈夫だと説得され、
「じゃあ、担当のサーバーが分かれば名前を教えて」と頼む。
予約時間の1時間前だったが、まだサーバーは未定だという。
「ちゃんと伝えるから大丈夫よ」となだめられ、
私たちは一旦店を後にした。

いざパーティーが始まり
おいしくメインのステーキを平らげた頃、
サーバーが「この後お祝いのスィーツがあるからね」
みたいなセリフを残して奥へ消えていった。
嫌な予感がした。
私はリスニングが苦手ではあるが、
「pie」と「on the house」という言葉が
耳に飛び込んできたからだ。
「on the house / 店のおごり」ってなんのこっちゃ?

旦那がケーキを準備すると言い出した時、
他の仲間も同じことを考える可能性があるから、
ダブらないように互いに確認したほうがいいと
一応アドバイスはした。
(基本的に私の意見は採用されない)
「(今回のメンバーに)いや、そんなヤツはいない」と
言い切り、単独で実行に移した旦那。
やっぱり誰かがレストランに電話をして
ケーキを準備してたのかと最初は思ったのだが、
どうも違うらしい。

食事の合間に旦那はトイレと称して席を立ったのだが、
この時にキッチンにケーキの確認をしに行っていた。
自分が預けたケーキを食後に出してもらう段取りの確認だ。
ところがここでミスコミュニケーション発生。
おそらく「バースデー」と「ケーキ」だけが
相手に伝わったのだと私は分析する。

サーバーは誇らしげに、
レストランが提供しているアイスケーキに
ローソクを立てて現れた。
うちの旦那は発狂寸前。
「それは俺が持ってきたやつじゃない!」
サーバーは驚きを隠せない。
「えっ、持ってきてたの?何も聞いてないよ」

この『ホウレンソウ』の欠如…
カナダあるあるである。
あれほど、受付の女性が「大丈夫」だと「心配ない」と
言っていたのは何だったのか?
そして私がいつも感じるのは、
100%ネイティブ同志の会話が通じ合わない不思議…

ただでさえステーキという満足度ありありの食事のあとに
アイスケーキを出され、
さらにそのあとにケーキが出てきて誰が食べられる?
仲間は旦那の行動を称賛しつつ、
気を使ってケーキにも手をつけてはくれたが、
旦那のハートは大きくえぐられてしまった。
もちろん完食とは程遠い。
サーバーが持ち帰りのboxを持ってこようとしたが、
旦那は「要らない」と断る。

その時、その場を救ってくれた女神様がいる。
「えっ、私持って帰りたい」
みんながてんでんにスプーンで手をつけた残りのケーキである。
「これおいしかった。
今はおなか一杯で食べられないけど、あとで食べたい」

そう言って、残りのケーキをほとんどハコに詰め
持ち帰ってくれた。
もしかしたら、
本当に「おいしい」と思ってくれたのかもしれない。
単純に「食べたかった」だけかもしれない。
それでも私はめちゃくちゃ嬉しかった。

しかし彼女のこの行動は、
「空気が読める」彼女の優しさだと確信している。
なぜかって?
それは、常日頃から優しさにあふれる
私の大事な日本人の友人が発した言葉だったから。
空気を読む力に長けている。
彼女に本心を聞いたところで本音は言わないだろう。
たとえどんな理由であれ、
彼女が救ってくれたことは紛れもない事実である。
心からありがとうと伝えたい。

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