昔からスポーツが好きだが、私は競争心に欠ける。
最大の褒め言葉で、
「ソフトボールでオリンピック目指せば」などと
言ってくれた友人もいる。
(私にはソフトボールの経験がないにもかかわらずだ)
ただ、アスリートとして成功しないのは
自分が一番よく知っている。
トップアスリートになるためには絶対に欠かせない
「負けたくない!」という強固な意志が欠落しているのだ。
他人に勝つことよりも、頂上を目指すことよりも
私は好きなスポーツを単純に楽しみたい。
もちろん勝てれば喜びもひとしおなのは重々承知だが
自分の成長が見られるだけで十分嬉しい。
出来なかったことが出来るようになり、
少しずつでも上達していく過程が楽しいのだ。
バレーボールはカナダに来てから始めた。
それまでの経験と言えば中学校の体育の授業程度だ。
始めて顔を出したバレーのコートで
強いスパイクを返した時のこと。
相手側のチームにいたおじさんが握手をしにきた。
”君、あの強烈なスパイクをよく拾ったね”と言わんばかりの
驚きと満面の笑みを浮かべていた。
私にとっては真正面に飛んできたから腕に当てて返したまでで、
まさかそんなに驚かれるとは思ってもみなかった。
ボールスポーツが得意な私は、
元々レシーブやトスにはある程度の自信を持っていた。
旦那が参加していたリーグの試合を始めて見た時も、
すぐに入って自分もプレーできると感じたものだ。
ただ、サーブ(オーバーハンド)やスパイクは別問題で
特にスパイクはボールを捉えるタイミングが分からない。
一度も経験したことが無いのだから当然だろう。
最初の頃は守備専門で、
前衛に回っても私にはトスがまったく上がってこなかった。
練習などもちろんなく、ただ毎週試合をするだけなのだから、
勝ちを目指すチームの戦略として理解できる。
ただ、不公平だなと常に不満だったのは、
他のみんなはゼロから始め、
試合の中で練習をしてきて今がある。
その中に途中から入った私は、
試合の中で練習をする機会すら与えてもらえない。
打つ機会がゼロでどうやって打てるようになるというのか?
他の人にとっては私が打てないことなど、どうでもいい。
しかし、私には大問題だ!
打てるようになりたいのに打たせてもらえない。
この葛藤が随分長いこと続いた。
サーブはみんなの顔色を伺いながら試合中に練習を重ねた。
それ以外上達の方法はない。
自分たちもサーブを失敗するくせに、
私が1回でも失敗すると、
アンダーサービスを促すジェスチャーを送ってくる。
“はぁ?? てめぇら何回失敗したと思ってるんだ?
1回ごときでガタガタ言うんじゃねぇぇぇぇ!” と
心の中でよく叫んだものだ。
そうやってサーブは何とか物にした。
そして苦節10年。
やっとスパイクが打てるようになった。
リーグ参加ではなく、有志12人で毎週プレーする
現在のバレーボールクルーに出会ったのが
私の成長を後押しした。
基本的に全員平等に打つ機会が回ってくる。
とは言いながら、やはり勝ちたくなってくると
ポイントを取れる人に集中してボールを上げる傾向はある。
しかし毎週少しずつ地味に経験を重ね、
コツをつかみスパイクが打てるようになってくると
ボールを上げてくれる回数も増えてくる。
(まだ、他の人と比較すると上げてもらえる回数は
少ない気がする)
そしてついには冗談ながらも、
”ブロックすべきだ!”との声がちらほら上がり始めた。
(男女ミックスの場合、女子にはブロックをしない
という暗黙のルールがある)
冗談とはいえ、これは最大級の褒め言葉だ。
“勝つためには彼女もブロックしないと”と
相手に思わせられるほど上達したという証だ。
まだまだ、ボールの芯を捉えられる確率も安定しないし、
決まった方向にしか打てていない。
相手コートの穴を見つけて
とっさに緩急をつけるスキルもなければ
悪いトスにはタイミングをまったく合わせられない。
まだまだ “のびしろ” は無限にある。
最初からチャンスを与えてもらえていたら、
もっと早くにスパイクを物にする自信はあったのに…
という悔しさは残るが、
これからも上達していく楽しさを味わいながら
長くプレーしていきたいものだ。
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