言い争い

スポーツ

自己主張が強いカナダ。
喧々諤々とそれぞれが意見を主張する現場に遭遇することは少なくない。
政治の話なんかは特に熱くなりやすい。
アメリカの大統領選挙を数日後に控えた今、
ラジオから流れてくるニュースも選挙関連が目立つ。
カナダ人は本当に政治好きだ。
昔、うちの旦那も友人とよく言い争っていたのを覚えている。

そしてもう1つはスポーツだ。
これは自分の贔屓チームについて
意見を交わすという類ではなく、プレー中の話だ。
私たちは有志12人で毎週バレーボールをしている。
オーガナイズされたリーグではなくただ楽しむためのバレーだ。
しかしメリハリをつける意味でスコアは必要になってくる。
バレーは25点先取なので、
それを1つの区切りとしてゲームを仕切り直す。

平均して2時間で6セットくらいプレーでき、
最終的に3勝3敗などのイーブンで終わることが多い。
リーグ戦ではないので、勝敗は結局のところ何にも影響しない。
ところが、これを気にする人がいる。
遊びだろうが何だろうが、
勝負ごとはとにかく勝たなきゃ気が済まないのだろう。
自分のチームの負けが続くと不機嫌になるプリンセスを筆頭に、
他にも勝ちにこだわるコンペティティブな人が数名いる。

私にとって重要なのは、リズムのいいバレーができること。
”リズムのいい” とは、レシーブ-セット-スパイクのリズムだ。
このいいリズムが両チームで続くと
エキサイティングなラリーが生まれ、
各プレーヤーのいい動きを生み出すことにつながる。
当たり損ねの柔いスパイクよりも
ドカンと打ちこまれる強いスパイクのほうがレシーブもしやすい。
またいいリズムでプレーしていると神経が研ぎ澄まされるのか、
不思議とフェイントなどへの反応も良くなる。
その結果、充実した2時間を楽しめるのだ。

ところが勝ちにこだわる連中は、
ポイントが欲しくなると利己的なプレーに走る傾向にある。
そしてin/outや、タッチネットのコールにケチをつけ始める。
先日も大きな言い争いに発展した。

その日はハロウィーンナイトで欠席者が増え、
10人でのプレーになった。
バレーは1チーム6人だが、5人でも十分楽しめる。
そして「今夜は5人だから、
”ティップ” は無しにしよう」ということで始まった。
ティップとは、ボールに指先をちょこんと当て
ネット越しに軽く落とすようなプレーなのだが、
要はアタックライン*の手前に
故意にボールを落とすプレーをしないことになった。
(*センターラインから3メートルの距離がある)

しかし、この臨時ルールの解釈が
人によって違うのだから困りものだ。
当たり損ねでアタックライン前に落ちた場合、
手を振りきっているのだからティップではないと言う人。
いやいやアタックラインを超えていないのだから
それもティップに入る(今夜の場合)と言う人…

ティップはそもそもブロックを避ける時などによく使われるため、
反射的に使ってしまう。
そして相手もそれに反射的に反応出来てしまうこともある。
それが上手く拾えればプレーはもちろん続くのだが、
反応はしたものの、上げきれずプレーが途切れると、
”今のはティップだからルール違反だ” と言い張る人が出てくる。

こうなると止まらない。
「急にルールを捻じ曲げた」と怒る人、
「ティップとは…」と定義を熱く語り出す人
「誰もいないところに落とすのはダメだが、
ボールにタッチした人がいるならそれはOKだ」と主張する人、
「はい、そこまで!」と言い争いを止めようとする人…
それぞれが同じ音量で同時にしゃべる。

これって、解釈の違いが発覚した時点で、
再度ルールをすり合わせれば済むことだと思うのだが、
そういう発想は生まれないらしい。
自分が正解だというプライドと
1点たりとも失いたくないという
負けん気の塊がムクムクと顔を出し、
誰も一歩も譲らない。

私からしたらホントにどうでもいい争い。
たかが庶民のバレーボール。
しかしおっちゃん達には、されどバレーボールということか。
楽しくやろうよ。

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