ドラマ撮影

トロント

カナダはドラマや映画の撮影地としてよく使われる。
バンクーバー、トロント、モントリオール。
大自然での撮影は、アルバータ州なんかも多いと聞く。
道端に [L・E・S] と書かれた赤いコーンが並んでいたら、
それは何かの撮影があるサイン。
L・E・S とはLocation Equipment Supplyの略で、
撮影現場に必要な設備や備品などを
貸し出している会社らしい。

実は外を歩いていて、
この赤いコーンを見かけることはしょっちゅうある。
うちの近所でも頻繁に見かける。
先日は、友人とランチにでかけた人通りの多い街中で、
赤いコーンが並んでいるのを目撃した。
コーンにそって駐車された大きなトラックの中には、
お洒落なフードトラックもあり、
恐らく撮影用のものだったと思われる。
周りではスタッフらしき人たちが談笑していた。

そう… このコーンを見かけると心なしか胸が弾む。
もちろんそんな感情は押し殺してクールを装っているが
有名な俳優さんに会えたりして?などと妄想が膨らんでいく。
しかし実際は、撮影の1、2日前から準備が始まるので、
赤いコーンを見かけても、必ずしも撮影が進行中なわけではない。
大抵は、見張り番?のスタッフがイスに座って
携帯をいじっている姿を見かけるだけだ。

撮影が行われる区域周辺には、
撮影のスケジュールを知らせるチラシが配られる。
今回、うちにもそのチラシが入っていて、
今日と明日の2日間が Filming と書かれていた。
その準備に2日、撤収作業に2日。
撮影時間も明確に記載されていたので、
その時間めがけて散歩に出た。

ちょうど、あるシーンのリハーサル中のようだった、
近くまで行き立ち止まっていると、スタッフの一人が寄ってきて、
「今のうちなら通れるわよ」と教えてくれた。
「少し見ててもいい?」とたずねると、
「もちろん。でも写真はダメよ」とくぎを刺された。

2人の俳優さんらしき人が数回同じような動きを繰り返し、
入念に打ち合わせをしている。
しばらくすると、私のすぐ近くにいたスタッフたちが、
一斉に色々な機材をもって大移動を始めた。
何事か?と思ったが、
カメラに写ってしまう位置にいたスタッフたちが
見えない場所へと移っただけだった。
そして本番が始まる。
車から降りてくる2人の男性が言い合いながら、
家のドアへ向かって歩いて行くというシーンだった。

本当にカチンコが鳴り、
「アクション!」の掛け声でお芝居が始まる。
3テイクくらいして、そのシーンは終了?(多分)
次なる打ち合わせに入っていった。
時間にして数秒のシーンに、何十人というスタッフが動いている。
そして交通誘導のため、お巡りさんも数名駆り出されている。

本番開始後、テイクとテイクの間にビデオのチェックが入る。
その少し緩んだ雰囲気の中、
1台の大きなバンが角を曲がって侵入してきた。
警官だったのか、スタッフだったのか定かではないのだが、
その車を呼び止めたのは大きな口笛だ。
大声をあげて走り寄るとか、
お巡りさんが持っていそうな笛を吹くとかではない。
(カナダの警官も持っているのかは知らないが…)
実に外国らしい。
タクシーを止める時なんかもよく口笛を吹く人がいるが、
運転手の耳に届くほどの音量を出せることがスゴイ。

何はともあれ、セリフまできちんと聞こえる状態で
撮影現場を見たのは、おそらく今日が初めてだ。
イスにでも座って一部始終を眺めていたいくらいだが、
それも恥ずかしいのでそのシーンだけでその場を後にした。
今日は夜中の1時頃まで撮影が予定されている。
明日またふらりと出かけてみようかな…

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